配偶者が拒否していても離婚が認められる条件とは?

離婚するための条件、相手に拒否されても離婚できる条件とは?

「配偶者と離婚したい」そう考える理由は夫婦により様々です。

では、どのような理由であれば、離婚がすんなりと認められるのでしょうか?

今回は離婚するために必要な条件を紹介し、具体的な例を挙げて離婚できるのか、そうでないのかを解説したいと思います。

離婚したいとお考えの方の参考にしていただければ幸いです。


両者の合意が取れている場合、離婚の理由は何でもOK

まずは前提として、離婚を望むのがどんな理由であっても、夫婦双方が合意していれば離婚が可能です。


離婚届を記入して市町村役場に提出してしまえば、それで離婚が成立します。

もちろん離婚に伴って諸所の手続きや協議は必要ですが、それをさておけば何も障害はありません。


このように夫婦間、およびその代理人の話し合いのみで行う離婚を「協議離婚」と呼びます。


離婚が合意に至らない場合、調停、審判、裁判を行う

では、夫婦の片方が離婚を望んでいるのに、もう片方が離婚を望んでおらず、話し合いが決着しない場合はどうするのでしょうか。

その場合、まずは裁判所に「離婚調停」を申し立てます。
離婚調停は、夫婦間の協議で話し合いがまとまらない、もしくは話し合いができない場合に、家庭裁判所の調停委員に間に入ってもらい、離婚に関する話し合いの落とし所を提案してもらう場です。

この調停で合意できれば、その時点で離婚が可能になります。

しかし、調停でも合意に至らない場合、審判、もしくは裁判の場に持ち込まれることになります。

審判離婚は、ほとんど離婚の合意に至っているのに、ささいな食い違いがある場合などに採られる手段です。

そのため、審判離婚で離婚の理由について争われることはほとんどありません。

離婚の合意がそこに至るまでまったく取れず、それでも離婚したいとき、離婚裁判をする必要があります。

この場合、裁判の場で離婚の理由が問われることになるのです。


法定離婚原因とは


民法第770条1項には、裁判上で離婚が認められる理由が下記のように定められています。

  1. 配偶者が不貞行為に及んだ
  2. 配偶者が悪意を持って婚姻関係を遺棄した
  3. 配偶者が3年以上の生死不明である
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由がある

これらは一般的に、「法定離婚原因(事由)」と呼ばれています。


配偶者がこのいずれかを満たすとき、基本的には裁判で離婚を認める判決が出ることになります。

1つずつ簡単に内容を解説します。


1. 配偶者が不貞行為に及んだ

いわゆる不倫がこれにあたります。

しかし、裁判の場で認められる「不貞行為」は、肉体関係を伴うもののみに限られます。


デート、ハグや、キスしかしていない、肉体関係には至っていない、などと配偶者が主張した場合、それを覆すには、肉体関係を証明する証拠を提示しなければなりません。


2.配偶者が悪意を持って婚姻関係を遺棄した

この項目によって定義される行為は、一般に「悪意の遺棄」と呼ばれます。
民法第752条には、「夫婦は同居し、互いに協力、扶助しなければならない」という事項が定められています。


悪意の遺棄とは、婚姻関係が破綻するとわかっていながら、夫婦が互いに対して持っているこれらの義務を放棄することを指します。

  1. 収入があるにも関わらず全く生活費を入れない
  2. 何の相談もなく別居し家に帰らない
  3. 相手を家から追い出す

などが悪意の遺棄に当たります。


3.配偶者が3年以上の生死不明である

配偶者が3年以上生死不明になっている場合、配偶者不在のまま離婚裁判を申し立て、離婚することが可能です。

ただし、次のような条件があります。

  • 連続で3年失踪している
  • 所在がわからないだけではなく、連絡も全くつかない状態である
  • 生死不明であることが認められる証拠が必要

行方がわからないだけで、生きていることはわかっている、というような場合は認められないことに注意が必要です。
その場合でも、一方的に自らの意思で長期間帰ってこないという事実をもって、2号の「悪意の遺棄」が認められる可能性はあります。


4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない

配偶者が強度の精神病にかかり回復が見込めない場合、夫婦がお互いに助け合う義務を果たせないとして離婚が認められるケースがあります。
法律上は、この離婚原因が認められる病名は定められていませんが、一般的に以下のものとされています。

  • 偏執病
  • 躁鬱病
  • 統合失調症
  • 早発性痴呆
  • 初老期精神病
  • 認知症
  • アルツハイマー病
など

これらの病と診断され、かつ、その度合いが強度で回復が見込めないと医師に認められる必要があります。
また、医師の診断が降りたから言って、必ず離婚が認められるわけではありません。

裁判官は、さらに次のような条件も加味して判決を下します。

  • この病により夫婦関係が破綻したか
  • 配偶者の治療に対して、離婚を望む者が尽力したか
  • 離婚後の配偶者に生活できる見込みがあるか
など

これまで見てきた3つの離婚原因は、程度の差はあれど配偶者本人の責任の部分が大きいと言えるものでした。
しかし、強度の精神病は、それらと少し趣が異なります。


民法第770条には、法定離婚原因を定めた1項に続き、「民法第770条1項に掲げる事由があっても、事情を考慮して婚姻の継続すべきと認めるときは、離婚の請求を棄却できる」と定めた2項があります。
配偶者が強度の精神病を患ったことを理由に離婚の訴えを起こす場合、特にこの2項をもって棄却される可能性が高いと言えます。


5.その他婚姻を継続し難い重大な事由がある

さて、ここまで法定離婚原因を見てきましたが、離婚したい理由がそのどれにも当てはまらない場合も多いと思います。
1~4に当てはまらない理由で離婚を望む場合、その理由が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」であるかを法廷で争うことになります。


「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあてはまるのは?

ここではいくつかの例をピックアップし、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるのかどうか解説していきたいと思います。


しかし、それぞれの項目について、どんなケースであっても判決が確定するものではありません。

一つ一つのケースによって、条件は千差万別です。あくまで参考程度にご覧ください。


性格の不一致


離婚の原因の統計では必ず上位に食い込む「性格の不一致」ですが、裁判にもつれ込んだ場合、これだけでは離婚が認められない可能性が高いと言わざるを得ません。

「その他婚姻を継続し難い重大な事由」は、他の項目と同等の重さであるかどうかも重視されますが、性格の不一致ではそれに及ばないと判断されます。


ただし、この性格の不一致を原因として夫婦関係が完全に破綻しているとみなされる証拠が提示される場合、離婚が認められる可能性もあります。


性生活に関するもの(セックスレス、性嗜好の不一致など)

性生活は夫婦生活の重要な要素と考えられているため、それに関することで離婚を望む場合は重視される傾向があります。

特に、理由もなく長期に渡ってセックスレスが続いている場合は離婚が認められる可能性が高いと言えるでしょう。
また、配偶者の特殊な性的嗜好により苦痛を感じているにも関わらず性行為を強要される、と言った場合も同様です。

問題となるのは、基本的に夫婦のプライベートで閉じた事情であるため、上記のような状況を証明するのが非常に難しいことです。


夫婦で性生活に関する相談を行ったときの記録や、それぞれの生活状況の記録、もしくは日記などが有力な証拠となります。


宗教活動

日本では信教の事由が憲法で認められているため、「宗教に入信している」という事実だけで離婚は認められません。
常識的な範囲の宗教活動も同様です。

しかし、宗教に関する活動などで、夫婦関係や生活が破綻するにまで至る場合は、その限りではありません。


例えば、

  • 宗教活動にのめり込み過ぎて、家事育児、仕事の全てを放り出している
  • 多額の金銭を宗教活動に費やしており、家計に負担が大きすぎる
  • 子供、配偶者に信教を強要する

などの実態があれば、離婚が認められる可能性があります。


刑事事件の被疑者として逮捕、起訴された

刑事事件の被疑者として逮捕、起訴され有罪判決を受けた場合は、個別の案件で大きく事情が分かれます。

例えば万引きをして窃盗罪で逮捕された、というような場合、それ単体で離婚が認められる可能性はあまり高くありません。


しかし、万引きをやめられないことで家庭が荒れ、夫婦関係がもはや破綻している、という状況が裁判で認められれば、離婚が認められる可能性もあります。
犯罪行為により、家族の生活が難しくなったり、婚姻関係が破綻している、という事実が認められるかがポイントとなります。

また、強制性交等罪などで有罪判決を受けた場合、犯罪の重大性ももちろんですが、法定離婚原因における「不貞行為」にあたる可能性が高いです。

肉体的、精神的な暴力

近年ドメスティック・バイオレンス(DV)という概念が広く認知されるようになりました。

DVは、肉体的、精神的な暴力のみならず、経済的、社会的、性的な暴力も含みます。


他の法定離婚原因と重複する場合もありますが、どのDVについても、証拠を押さえることができれば離婚が認められる可能性が高いです。


医師の診断書、DVに値するやり取りのメールログ、録音など、証拠が手元にある場合は保管しておきましょう。

しかし何よりも、身の安全を第一に考えることが大切です。


配偶者の両親や親族と関係が悪い

配偶者の両親やその他の親族との関係について、単純に「仲が悪い」だけでは離婚が認められるのは難しいです。

不和が過度であり、そのことで耐え難い苦痛を受けている、と第三者が見ても分かるような状態となっている必要があります。

  • 配偶者の両親、親族から虐待を受けている(DV)
  • 配偶者に何度も相談しても間に入ってとりなしてくれない
  • 親族との不仲が原因で夫婦の関係に亀裂が入り、修復不可能である

などの場合、離婚が認められる可能性もあります。
ただし、この状況を裁判所に認めてもらう証拠が必要です。

また、前提として、その状況をなんとかしようと努力した事実を示さなければなりません。


裁判所は基本的に婚姻関係の継続を勧める姿勢

離婚するために必要な条件や、法に定められた離婚原因について解説しました。

基本的に日本の法は、婚姻関係の継続を推奨するスタンスとなっています。


そのため裁判の場で離婚を認めてもらうためには、「離婚を求める側」が証拠を揃えて臨まなければなりません。
離婚を強く望む場合、現在自らが置かれている状況を分析し、必要なものを漏れなく準備する必要があります。

しかし、どんな準備が必要なのか途方に暮れてしまう場合もあるかと思います。
不安に思った場合は、法律の専門家である弁護士に相談してみるのも良いのではないでしょうか。


また、場合によっては証拠の収集を探偵事務所や興信所に任せることで、交渉を都合よく運ぶことができる可能性もあります。


自分ひとりだけで悩んで行動を決めてしまうと事態がこじれることもよくありますから、信頼できる第三者の手を借りることをおすすめします。



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